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横浜地方裁判所 平成9年(行ウ)2号 判決

原告

望月照浩(X)

被告

横浜市(Y1)

右代表者市長

高秀秀信

被告

横浜市建築主事(Y2) 佐藤一夫

右両名訴訟代理人弁護士

蓮沼次郎

事実及び理由

第三 争点に対する判断

一  訴えの利益について

野村不動産が平成八年一〇月七日、被告建築主事に対し、本件建物の工事完了届を提出し、同月一五日付けで同被告から検査済証の交付を受けたことは、前記第二、二の5のとおりである。ところで、建築基準法によれば、建築物の建築等の工事をしようとするときは、当該工事に着手する前に、その計画が当該建築物の敷地、構造及び建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(確認対象法令)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受けなければならず(六条一項)、建築確認を受けない建築物の建築等の工事は、することができないものとされ(六条五項)、また、建築主は、右工事を完了した場合、その旨を建築主事に届けなければならず(七条一項)、建築主事が右届出を受理した場合、建築主事又はその委任を受けた当該市町村若しくは都道府県の吏員は、届出に係る建築物及びその敷地が建築関係規定に適合しているかどうかを検査し(七条二項)、適合していることを認めたときは、建築主に対し検査済証を交付しなければならないとされている(七条三項)。これらの規定に照らせば、建築確認は、建築基準法六条一項の規定する建築物の建築等の工事の着手前に、当該建築物の計画が確認対象法令に適合していることを公権的に判断する行為であって、右法令に違反する建築物の出現を未然に防止することを目的としたものということができる。

このように、建築確認は、それを受けなければ工事をすることができないという法的効果を付与されているに過ぎないものというべきであるから、工事が完了した場合には、建築確認の取消しを求める訴えの利益は失われるものといわざるを得ない(最高裁昭和五九年一〇月二六日第二小法廷判決)。したがって、前記認定の事実によれば、原告の本件確認処分の取消しを求める法的利益は失われたものであり、本件訴えのうち、本件確認処分の取消しを求める部分は不適法というべきである。

原告は、建築物の規模、用途に照らし、周辺住民の生活に重大な影響を及ぼす場合には、工事完了後も建築確認の効力の排除を求める利益があるとする。しかし、そのような不利益は、当該建築物の存在そのものによるもので、建築確認の法的効力が存続していることによるものではないから、原告にその取消しを求める法的な利益があるとはいえない。なお、建築基準法九条一項は、特定行政庁は、確認対象法令に違反する建築物について、建築主等に対し、当該建築物の除却その他の是正措置を命ずることができるとするが、右命令を発するかどうかは特定行政庁の裁量に委ねられ、建築確認の効力とは無関係であるから、この意味でも、本件確認処分の取消しを求める法的利益はないというべきである。

二  本件確認処分の違法性

仮に本件確認処分の取消しを求める訴えが適法であるとした場合、本件確認処分に違法事由があるかどうかにつき判断する。

1  条例違反について

(一)  原告は、被告建築主事は、本件確認処分に当たり、建築主が条例の定める手続を遵守したかどうかを審査していないから、右処分は違法であるとする。

しかし、建築基準法六条一項は、建築物及びその敷地の衛生、安全という行政的見地から、当該建築物及びその敷地がその敷地、構造等に関する法令に適合しているかどうか審査するものとした規定であるから、同項により確認の対象とされる法令(確認対象法令)は、建築物及びその敷地の衛生、安全等に関する技術的基準を定めたものをいうと解すべきである。

また、弁論の全趣旨によれば、「建築確認法令について」(昭六一・三・二八住指発第八〇号建設省通知)は、確認対象法令の基準として、(1)制度の趣旨及び目的が建築基準法の趣旨及び目的と異ならないこと、(2)具体的な技術的基準であること、(3)裁量性の少ないものであること、(4)原則として、営業許可、公物管理上の許可等に係るものではないことを掲げていることが認められる。

ところで、〔証拠略〕によれば、条例は、横浜市日照等指導要綱を発展的に解消したもので、それ自体、技術的見地から建築基準法上の建築制限を附加しようとするものではなく、中高層建築物等の建築に関し、建築主が配慮すべき事項、建築計画の周知手続、紛争についてのあっせん及び調停その他必要な事項を定めることにより紛争の防止及び解決を図り、良好な住環境を保全、形成しようとするものであることが認められる。このように、条例は建築基準法とはその趣旨、目的が異なるから、それは、同法六条一項の確認対象法令には含まれないと解すべきである。したがって、建築主事は、建築確認に当たって、建築主が条例の定める手続を遵守したかどうかを審査することを要せず、仮に本件建物について条例違反があったとしても、本件確認処分の効力に影響を及ぼすものではないと解される。よって、この点に関する原告の主張はそれ自体失当というべきである。

(二)  なお、原告は、本件確認処分について、条例の個別の規定違反を問題とするので(後述の損害賠償請求の関係もあるので)、以下に判断する。

(1) 条例七条違反

原告は、建築主である野村不動産は、原告ら近隣住民の日照、居室の観望に及ぼす影響を軽減するよう配慮せず、被告建築主事らも、適切な指導を怠ったもので、条例七条に違反するとする。

ところで、〔証拠略〕によれば、条例七条は、建築主に対し、地域特性等に応じ可能な範囲において、近隣住民の住居の日照に及ぼす影響の軽減、居室の観望を困難にすることなどについて、計画上の配慮を求め(どの程度の配慮をすべきかは、建築物の用途及び規模、立地条件等に応じて第一次的には建築主が判断するものと解される。)、このような配慮がされない場合には、横浜市等において必要な指導を行い、適正な建築計画への誘導を図ることを予定したものであることが認められる。

そして、〔証拠略〕によれば、原告の居宅は、本件建物の南側に隣接し、本件建物のバルコニーが南向きであるのに対し、原告の居宅は、西向きに建てられていること、野村不動産は、右バルコニー前面に樹木を植栽する、隣地境界に目隠しフェンスを設置する等、できる限りの対策を施したいとして、計画上近隣住民の居室の観望に配慮していること、日照については、建築基準法等の日影規制に従うものとし、その影響を受ける住民(主として本件建物の北側に位置する住民であるが)に対しては、「建築計画のお知らせ」に実日影図を添付して、個別に説明をし、本件建物と原告の居宅の敷地境界との間に五メートルの間隔を設けるなどの措置をとるものとしたことが認められる。

以上のことから、建築主である野村不動産は、日照、居室の観望に配慮しなかったとはにわかにいえず、被告建築主事らが適切な指導を怠ったともいえない。

(2) 条例八条違反

〔証拠略〕によれば、条例八条一項は、中高層建築物等の建築主及び工事施工者は、当該工事の実施により周辺の住環境に及ぼす影響を最小限にとどめるため、工事により発生する騒音及び振動の低減措置をとるよう努めなければならないとしていることが認められるところ、原告は、野村不動産は右措置を怠り、被告建築主事らはこれに対し適切な指導を怠ったとする。

しかし、〔証拠略〕によれば、野村不動産は、「建築計画のお知らせ」及び標識において、作業時間を制限した上、午後五時以降の作業については、騒音、振動の軽微なものに限るとしていること、原告の質問書に対し、平成七年二月二八日及び同年八月四日、工事に伴う騒音、振動については、騒音規制法等の法令を遵守し、低騒音、低振動型の機械を用い、作業に当たっては、待機車両のエンジン停止、重機作業、既存擁壁の解体・掘削等の作業についても騒音、振動に十分配慮するとしていることが認められる。してみれば、野村不動産が条例八条一項の定める措置を怠ったとはにわかにいえず、被告建築主事らが必要な指導を怠ったともいえない。

(3) 条例一〇条違反

原告は、「建築計画のお知らせ」により、原告ら周辺住民に事前に知らされた本件建物の規模等と本件確認申請書の建築物の概要とが異なっており、条例一〇条に違反するとする。そして、〔証拠略〕によれば、「建築計画のお知らせ」では、本件建物の建築面積六〇八・五六平方メートル(建ぺい率五九・九七パーセント)、延床面積二〇二八・四二平方メートル、建築基準法上の最高高さ一四・六〇メートルと記載されていること、これに対し、本件確認申請書では、建築物及びその敷地に関する事項欄に、建築面積の敷地面積に対する割合五五・七パーセント、延面積二〇二八・一五平方メートルと記載されていることが認められる。

ところで、〔証拠略〕によれば、条例一〇条一項は、中高層建築物等の建築主は、周辺住民にその建築計画の周知を図るため、当該建築物等の建築計画の概要を表示した標識を設置しなければならないとしていることが認められ、右規定は、詳細な建築計画が確定する前の早期の段階で、建築計画を周辺住民に知らせ、相隣問題の調整を自主的に進めるとともに、横浜市等においても、建築計画の概要を把握し、建築主等に対し必要な指導を行わせる趣旨のものと解される。したがって、標識により表示された建築計画は、確定的なものではなく、確認申請時までに若干の変更があることは予定されているというべきであり、確認申請の段階に至って計画内容が変更されたとしても(大幅な変更がされたような場合は格別)、直ちに条例一〇条に反するとはいえない。

したがって、本件建物の規模について前述の程度の変更がされたからといって、直ちに条例一〇条に反するとはいえない。

なお、本件各証拠によっても、「建築計画のお知らせ」の最高高さ一四・六〇メートル、本件確認申請書の最高高さ一六・〇〇〇三メートルは、それぞれ、いかなる基準により算定されたものかは必ずしも明らかでなく、野村不動産が確認申請の段階に至って本件建物の高さを右のように増大させたものとはにわかに認められない。

(4) 条例一一条違反

〔証拠略〕によれば、野村不動産は、平成七年四月二一日に横浜市長に提出した近隣説明等報告書において、近隣住民の住居の居室の観望について、近隣住民と協議の上必要な部分は目隠し等の設置を行う準備があるとし、日照については、隣地境界から五メートルの距離を確保したとしていることが認められるところ、原告は、野村不動産は、そもそも目隠しを設置する予定はなく、日照についても、隣地境界から五メートルの距離を確保したのみでは対策として不十分であるから、右説明は条例一一条の趣旨に反するとする。

ところで、〔証拠略〕によれば、条例一一条一項、条例施行規則一〇条(8)は、中高層建築物等の建築主は、右建築物等の建築に伴って生ずる周辺の住環境に及ぼす著しい影響及びその対策について、近隣住民に説明しなければならないとしていることが認められる。しかし、右各規定は、紛争の事前調整の手段として建築主に説明を義務づけたにとどまり、必ずしも建築主の説明に係る住環境対策がそれ自体十分な内容のものであることや建築主の説明に沿った対策が現実に講じられることを要するとしたものとまでは解されない。したがって、野村不動産の前記説明は、これに反するとはいえない。

なお、証拠(原告本人尋問の結果、弁論の全趣旨)によれば、結局、原告宅との境界に樹木が植えられただけで、目隠しフェンス等の設置はされなかったことが認められるが(なお、原告宅境界から五メートルの距離は確保した。)、野村不動産は、前述のように、協議の上必要な部分について設置の準備があるとしたもので、具体的な施設の設置を確約したわけではないから、右説明が虚偽のものであるとまではにわかに認められない。

また、原告は、平成七年九月二日の説明会において、建築主、施工業者に対して日照権の問題について質問したが、近隣説明等報告書には、その旨の記載がないとする。しかし、〔証拠略〕によれば、条例一二条一項、二項(2)は、建築主の説明状況の報告書は、確認申請をしようとする日の三〇日前までに提出しなければならないものとされていること、本件確認申請書は、平成七年九月一四日に提出されていることが認められる。したがって、同月二日の説明会でのやりとりが近隣説明等報告書に記載されていないからといって、違法といえないことは明らかである。

(5) 条例一三条、二八条違反

原告は、野村不動産の近隣説明等報告書は虚偽の事項を記載したものであるにもかかわらず、横浜市長は、これに問題がないとして審査を終了し、虚偽記載の事実を公表しなかったもので、条例一三条、二八条二項に違反するとする。しかし、前述のように、野村不動産が近隣説明等報告書に虚偽の記載をしたものとは認められず、したがって、横浜市長の右措置が違法であるとはいえない。

(6) 条例一四条、二一条違反

(一)  原告は、横浜市長に対し、条例一四条二項の紛争の調整の申出をしたが、同市長は、相当な理由があるにもかかわらず、あっせんを拒否したとする。

しかし、原告本人尋問の結果によれば、原告は、横浜市長に対し、本件紛争について陳情をしたが、同市長は、進んであっせんを行うなどの対応をしなかったというに過ぎず、同市長が原告の具体的な調整の申出を理由なく拒否したものとは認められない。したがって、右措置が条例一四条二項に違反するとはいえない。

(二)  また、原告は、条例二一条に基づき横浜市長に対してした調停の申出について、取下げを強要されたとし、〔証拠略〕、原告本人尋問の結果中には、横浜市の担当職員から調停ではなく、あっせんの申出をしてはどうかといわれたとの部分がある。しかし、条例二一条一項は、市長は、紛争当事者の申出により「調停に付することができる」としているに過ぎず、申出があった場合に調停に付することが必要的とされているわけではない(〔証拠略〕)。また、紛争解決をあっせんにより当事者の自主性に委ねるか、専門性を有する調停委員会の積極的な関与により行うかは、市長の合理的な裁量に委ねられるというべきである。したがって、横浜市の担当職員が前述のような指示をしたからといって、直ちに条例二一条に違反するとはいえない。

(三)  調停委員会が平成八年二月二三日付けで調停を打ち切ったことは前記争いのない事実等のとおりであるところ、原告は、調停委員会が原告の本件計画変更の要望を退け、調停を打ち切ったことや近隣への配慮事項を遵守させなかったことが違法であるとも主張する。しかし、〔証拠略〕によれば、条例二四条一項は、小委員会は、調停に係る紛争について紛争当事者間に合意が成立する見込みがないと認めるときは、調停を打ち切ることができるとしていること、調停委員会は、建築計画の変更に関する建築主と住民らの主張に根本的な隔たりが大きく、合意が成立する見込みがないことを理由に調停を打ち切ったことが認められる。したがって、同委員会の右措置が違法であるとはいえない。また、同委員会は、調停において建築主が近隣に配慮するとした事項を建築主に現実に遵守させる義務があるとまで解すべき根拠はなく、この点についての原告の主張も理由がない。

以上のとおり、本件で、被告建築主事らに条例違反があったとはいえない。

2  建築基準法違反について

(一)  建築基準法一二条三項違反

〔証拠略〕によれば、本件建物の設計者は、駐輪場の移設による延べ面積等の変更について、被告建築主事に対し、平成八年九月六日、建築基準法一二条三項に基づく計画変更届を提出したことが認められる。原告は、建築計画の内容が当初の説明と異なっており、建物の規模が増大しているから、被告建築主事は、建築主に対し確認申請の取り直しを求めるべきであり、変更届の提出で足りるとしたことは、違法であるとする。

ところで、建築基準法一二条三項は、建築確認を経ずに工事がされた場合や確認内容と異なる工事がされた場合に、建築主等に報告を求め、確認の追完や確認内容の変更を図った規定であり、確認申請に係る建築物の規模等が、建築主の当初の説明と異なっていた場合に関する規定ではない。したがって、この場合、そもそも確認申請の取り直しは問題とならず、原告の主張はそれ自体失当というべきである。

また、〔証拠略〕によれば、計画変更により延べ面積等に若干の増減が生じているものの(建築確認時の建築物全体の面積二四六二・二七平方メートル、容積対象の延べ面積二〇二八・一五平方メートル、変更後の建築物全体の面積二四六〇・七平方メートル、容積対象の延べ面積二〇一九・九五平方メートル)、右変更の程度は、前述した建築基準法一二条三項の趣旨からしても、確認申請の取り直しを要する程度のものとは認められない。

なお、弁論の全趣旨によれば、条例施行規則一四条は、建築面積、延べ面積及び高さについて、同一性が失われない範囲内の計画変更で、住環境が改善されるもの又は住環境に及ぼす影響が少ないものの変更届を市長に提出し、周辺住民に対し説明をしなければならないとしていることが認められるところ、野村不動産が本件建物の延べ面積等の変更について、右変更届を提出し、周辺住民に対し説明をしたことを認めるべき証拠はない。しかし、前述したところからすれば、右規定違反があったとしても、本件確認処分の効力が左右されるものではない。

よって、原告の主張は、いずれにせよ理由がない。

(二)  容積率違反

〔証拠略〕によれば、本件確認申請書は、受水槽室、ポンプ室、機械室等六六・六一平方メートルを建築基準法五二条二項に基づき、地階の住宅の用途に供する部分として容積率の対象面積に不算入としたことが認められる。原告は、右地階部分は実際には存在せず、本件建物は、容積率二〇〇パーセントを超え、同法五二条一項に違反するから、本件確認処分は違法であるとする。

しかし、野村不動産が右地階部分が存在しないにもかかわらず、ことさら虚偽の申請をしたことを認めるべき証拠はない(原告は、計画変更届(〔証拠略〕)において、確認申請時と変更後で、自動車車庫等の部分の面積が一七・一七平方メートル増加しているにもかかわらず、地階の住宅部分の面積が一〇・五平方メートル減少したのみで、建築物全体の面積に変わりがないのは不自然であるとするが、そのことから、直ちに右住宅部分が架空のものであるとはいえない。)。

また、そもそも建築確認は、申請書の記載事項が法令の基準に適合するかどうかを判断するもので、建築物の現況調査が要件とされるものではないから、申請書の記載が不実のものと認められるような特段の事情がない限り、申請書の記載が現況と異なっていたとしても、確認処分が直ちに違法となるとはいえない。前述のように、本件確認申請書の地階の住宅部分の記載が虚偽のものであると認めるべき特段の事情は存しないから、本件確認処分が違法であるとはいえない。

(三)  用途転用防止措置違反

原告は、被告建築主事が本件建築物の容積率制限違反の用途変更について、使用禁止等の措置をとらなかったことが違法であるとする。そして、乙四号証によれば、建設省通達第一の5(1)は、地階のうち住宅の用途に供する部分については、確認審査に当たり慎重に判断することとし、同(2)は、住宅の地階に係る容積率の不算入措置を受ける建築物については、建築後もその現況の把握に努め、違反が発見された場合、使用禁止等の措置をとるものとしていることが認められる。しかし、前述のように、本件確認申請において、地階の住宅部分を容積率に不算入としたことが違法であるとは認められず、その後、本件建物について用途変更があったことも認められないから、被告建築主事が使用禁止等の措置をとらなかったことが違法であるとはいえない。

また、被告建築主事に右通達違反があったとしても、直ちに本件確認処分が違法となるともいえないから、原告の主張はいずれにせよ理由がない。

(四)  確認申請書の不実記載

乙一号証によれば、本件確認申請書の建築物及びその敷地に関する事項中の「その他必要な事項」欄に「自己所有」と記載されていることが認められるところ、原告は、本件建物は分譲用住宅であるから、右記載は虚偽であるとする。しかし、〔証拠略〕によっても、右記載が本件建物、敷地のいずれの所有関係を示すものかは明らかではなく、これが虚偽記載であるとはにわかに認められない。よって、本件確認処分が違法であるとはいえない。

3  以上のとおり、本件確認処分に違法事由はないから、原告の主張はいずれにせよ理由がない。

三  損害賠償請求について

原告は、横浜市長や被告建築主事は、建築主の野村不動産が条例の規定を遵守していないことを知りつつ適切な指導を怠り、また、本件建物が法令に違反するにもかかわらず、建築確認をしたため、本件建物による騒音被害等により原告の人格権、生存権が侵害されているとする。しかし、条例は、まず、建築主に対し、周辺住民の住環境に対し、一定の配慮をすべきことを義務づけたものであり、横浜市長は、建築主がそのような配慮をしない場合に、適切な指導、助言を行って良好な建築計画への誘導を図るべき責務を負うにとどまると解される。

そして、原告が前記交渉等において、野村不動産や横浜市の職員の対応に不満を抱いていたことは窺われるものの、前述のとおり、建築主の野村不動産に条例違反があったとまではいえず、横浜市長が条例上必要とされる適切な指導、助言を違法に怠ったともいえない。また、被告建築主事による本件確認処分にそれ自体、建築基準法等の法令違反があったといえないことも前述のとおりである。

そうすると、仮に原告が本件建物により受忍限度を超えた何らかの被害を受けているとしても(本件証拠上、にわかにこれを認め難いが)、それは、野村不動産あるいはその所有者等との間で解決されるべき問題であって、被告横浜市が原告に対し、損害賠償義務を負う理由はないというべきである。

四  結論

以上によれば、本件訴えのうち被告建築主事に対し本件確認処分の取消しを求める部分は不適法であるからこれを却下し、被告横浜市に対する部分は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 浅野正樹 裁判官 近藤壽邦 近藤裕之)

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